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2021.11.04
遠藤彰子 黒峠の陽光(2021年)雪・星ふりしきる(2020年)

黒峠の陽光:峠は「たむけ(手向)」という言葉が変化したもの。通行者がここで道祖神に手向をして祭り、旅路の平安を祈ったところからきているという。峠は、山の坂道を登りつめた最も高い所のことであり、山の上り下りの境目。そこに、陽光が差し込んでいるという情景。

明治の歌人、葛原妙子の歌、「黒峠とふ峠ありしあるひは日本の地図にはあらぬ」から拝借し、タイトルを「黒峠の陽光」とした。三句欠落の不安定な旋律は、創造性を掻き立てられる。前作(雪・星ふりしきる)2020年で描いた宇宙的な世界の対比。白に対して黒を基調色とした。

黒峠の陽光

黒峠の陽光2021年作333.3×497.0㎝油彩撮影可

 

微睡(まどろみ)の中でぼんやりと考え事をしていた時に、昔読んだ本の一小節とそのイメージが、ふと脳裏を掠めた。すぐに飛び起き、まだ微かにたゆたう印象の残り香を描き記したのが、この作品のスタートラインになっている。先日、浮かんだキーワードを元に、図書館で調べてもらったところ、アインシュタインの言葉であることが判った。確かにこの一節に感銘を受けたことに間違いないのだが、何十年もの間、ずっと胸の奥に残っていたことに驚いた。「人間は、私たちが「宇宙」と呼ぶ完全体の一部、すなわち時間と空間を限定された一部である。人間は自分自身を、そして自分の思考や感情を、他と切り離なされたものとして体験する。それは意識のうえで、いわば視覚的錯覚が起こっているからである。私たちはこの錯覚という監獄に閉じ込められているせいで、個人的な判断しかできなくなり、周りの少人数の人間しか愛せなくなっている。この監獄を抜け出し、思いやりの輪を広げ、あらゆる生物と美しいままの自然を包み込んでいること、それが私たちに課せられた勤めである。」(アルベルト・アインシュタイン)

雪星うりしきる

雪・星ふりしきる2020年作333.3×497.0㎝油彩撮影可

遠藤彰子図録

遠藤彰子図録

 

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