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2023.10.04
司馬遼太郎 20年ぶりの「坂の上の雲」

バルチック艦隊がヨーロッパの北海から極東の海までそれこそ万理の波濤を蹴って遠征するというその事業そのものが、すでに英雄詩的であった。それに対し、それを迎え撃つべき日本の作戦家が、東京の一隅の借家で、そら豆をほおばりながら天井をにらんで考えていること自体が、洒脱を愛する日本人の禅画めいていて何やら滑稽であるといえるのであろう。ロシア士官のほとんどは貴族であったが、日本の作戦家の秋山信之の借家には、湯殿さえなかった。幸い近所に妻の季子のほうの親戚があったため、そこに貰い湯に行くのである。

毎夜僕自身も旅順におり、この司馬遼太郎の文章は禅画になり、描いてみたい。

司馬遼太郎「坂の上の雲」2017年3月5日代9版

 

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