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2019.12.09
偉大なる常識人
79歳で亡くなりましたと喪中の手紙が届く。証券会社の駆け出しの札幌の新人時代。仕事の落ち込みとちっぽけな恋わずらいの話を、手稲の釣り堀に週末連れていかれ聞いてくれたKさん。池の水面(みなも)が北国の短い夏を急いでいるようで。じっと釣り糸と浮きを眺めながら、僕の話を聞いてくれた。同期2人は強烈なノルマに耐えかねて転職。僕は絶対矛盾の自己同一。支店長はその後副社長、証券業協会の社長に、副支店長は最後の涙の社長に。サラーリマン生活では大成だがどうでもいい人間。Kさんは証券ミディーさんを取りまとめる役職。達成したノルマの後、また追加の数字の依頼にも、「そっしょう、それはなんぼ無茶」と言われながら対応されていた。当時、各社証券会社の強烈な競争なかでも偉大なる常識人として勤めていた。7月に亡くなる前に、会社に突然電話が。30年ぶりの声は何も変わっていなかった。
釣り堀の釣果もあり本人も大満足。僕も大きな鯉が釣れるのだが針を外すのが大の苦手。釣れたまま竿を渡すと「おまえさん、こんなこともできないのと」と二度と誘ってくれなかった。このビジネスを20年やってこれたのも伝説の人よりKさんのような偉大なる常識人を肝に銘じてきたことかもしれない。
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