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2018.11.20
木村定三の観た長谷川利行
昭和54年の長谷川利行展に寄せて熊谷守一コレクションで有名な木村定三は長谷川利行を乞食遊行僧の円空に比肩し近世から現代まで彼を超えるものがいないと絶賛している。彼がパトロン、コレクターとして支えた熊谷守一に生前このように持論を述べ熊谷守一も「それはそうだ」と木村定三の説に賛同したと書いている。
その節とは熊谷守一は初期のころから青木繁、長谷川利行は2人とも天才型の画家と評しているが、青木繁の欠点はその作品が悉くと言っていい程作為的の産物である。凡そ作為の作品が通用する範囲は、その作者以下の精神的境地の人間に限られる。青木繁の作品は、現在ではすでに陳腐であり現実感がなく、私には何等の感興が起こらない。これに対して長谷川利行は対象物に対して、無心に全力体当たりをし、その心をとらえて画面に表現することのできる男である。そこには少しも作為が感じられず内容に価値がある。内容的価値には
永遠の寿命がある。これを要するに青木より長谷川利行が遥かに勝っているということが私の多年の見解である。この事を木村定三はどうしても確認したくて、熊谷守一がなくなる1年前に質問し賛同を得たことを書いている。
一流のコレクターは一流の審美眼を持っていた。
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