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2017.12.26
運慶 大日如来像
壺中居のK学芸員が年末の挨拶に来られた。来年開催する竹中浩さんの個展と竹中浩先生から宇都宮さんに渡してくれと直筆の白磁陶芸の作品集を頂いた。「そう、いままで時間がなくて運慶作の大日如来像の変遷について」とK学芸員は手品あかしをするように、微笑んで話をした。外資系の金融に勤めていた所有者は宇都宮の骨董屋でその作品を購入した。そこは我々の古美術商も名前を聞かないなど、ごく一般のところで、たぶん何百万円という買い物ではなさそうですと。その後東京国立博物館に鑑定に出したところ、壺中居さんも親しくして、いまは大学教授をされているかたが在任しており鑑定結果は限りなく本物と。しかし暫らく、上野に置かれたままの状態が続いたそうな。そして所有者は俄然、売る気モードにスイッチオン。
仏像を扱う古美術商にかたっぱしに持ち込み、法外な価格でオファーを出したそうだが、どこもその価格で購入するところがなく、サザビーズも降り、クリスティーズが競売にかけ15億円で日本の宗教法人が落札した。本命はNY在住の金融関係、ファンドの創設者で美術愛好家。実名を明かさないこの世界だが僕はダイタイ見当がついている。本人は西海岸に住んでいるが、NYの乾燥したなかで大日如来像を維持するのは難しいとの判断。これが本当の美術愛好家だとおもう。彼がオークションに本格的に参戦したら30億で落札も。現に浮世絵シリーズ、仏像に今年30億ついたバブルの時代。
「ところでなんでその宗教法人か熱心だったかご存知ですか?」と聞くと、K学芸員は「さぁ、」と。「そこは京都醍醐寺に熱心に学んだ人が起こした宗派。京都醍醐寺は空海の孫弟子、聖宝理源大師が開祖で空海真言宗は大日如来が一番なんです」と言うと、「ほう」と一言。ちょとの挨拶がと云い、来年もよろしくといわれ、徒歩600歩の距離を帰られた。

運慶展で観た大日如来像は印象に残ったが、三井美術館で開催されて観た滋賀県の石山寺の快慶作、大日如来像は僕自身の人生の大どん底時代観た。いまでも忘れられない名作だ。

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