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2012.04.16
忘れえぬ経営者
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「宇都宮さん、千円札を三枚貸していただけませんか?」と海軍兵学校卒の白髪のタクシー会社の創業者の声。法人接待の心得か、僕はきれいなピン札を三枚をそっと財布から出し渡した。国技館での新春の相撲の観戦の後、買い手であるタクシー会社の創業者が、売り手である福祉関連の女性経営者が開いた秋の東北の名門ゴルフ場での接待とそのあとクラブゲストハウスでの初回のトップ会談のお礼が名目。
60代の女性経営者が相撲観戦の後、気を利かして料亭に差し出した運転手さんに、白髪の創業者が相撲茶屋で用意した小さな袋にピン札をいれ、「待ち時間お弁当でも」とさりげなく運転手さんに渡した。
買い手のタクシー会社の創業者は後継者の息子専務を同席、売り手の女性経営者はその地域では著名な経営者で地元のサッカークラブの後援者でもある。
約一年近く両社のM&Aを仕切った。買い手側からみて福祉事業に参入できる魅力的なM&A案件であったが、価格でこの案件は決まらなかった。
料亭ではゴルフ、贔屓の力士、創業時の苦労話、福祉事業の意気込み、両社の経営者の生い立ちなど、自分はただ黙って、一流料亭の美味い料理を食べながら流れのまま聞いていた。静かな時の物語を聞いているようであった。あれから10年近くになる。
週末の僕の仕事。日本橋のオフィスでM&A対象企業を約800社から1000社調べていると懐かしいタクシー会社の名前があった。勿論、創業者は相談役に、堅実な息子専務は代表者になっていた。業績も堅実に推移。
後日、会社に届いた、トップ会談の調整のお礼の封筒には綺麗な千円札が三枚添えられていた。
白髪の海軍兵学校卒の颯爽とした姿と創業者の微笑みが目に浮んだ。
%E3%83%AD%E3%82%B4.jpg     りんどうの花言葉:「正義と共に勝利を確信する」「気遣う心」     
                   創徳企業情報 代表取締役社長 宇都宮徳治
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