壺中対談Interview
2024.10.22
田中一村展
先日、田中一村の作品を初めて見る好機に恵まれた。
図録でしか見た事がなかった奄美時代の作品には本当に圧倒された。
色鮮やかな花鳥画や鉄斎風の亀寿老人図などその画力の高さに驚かされたが、僕が特に驚いたのが15歳くらいから数年描いていたとされる呉昌碩風の画と讃である。
呉昌碩とは、清朝末期から近代にかけて活躍した詩書画篆刻に精通した最後の文人と言われた芸術家である。
呉昌碩風の画も素晴らしかったが、讃も本当に呉昌碩そのもので15歳の少年がここまで書けるのかとびっくりしてしまった。
当時日本でも人気の高かった呉昌碩風の作品を倣う事・倣いたくなる事は、普通に理解できる。
ただ書道の世界では、戦後になってから明清時代の書道を作品に活かす事が許されるようになったとよく聞いていたので、画の世界は早くから開かれていたのだなぁと感心した。
富岡鉄斎も呉昌碩の印を使用していたし、彫刻家朝倉文夫の書斎にも呉昌碩の扁額が飾られていた。
中国のアートバブルも少し落ち着いてきたようだが、呉昌碩の作品は今も人気があるらしい。
15歳の少年が倣いたくなるはずである。
しかも、あんなにも上手いとは。
心が折られた展覧会だった。
菊山武士
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