合併
合併とは?
合併とは2つ以上の会社が契約により1つの会社に合同することをいいます。
各会社が完全に一体となるので、企業再編手法の中では、最も結合状態の強いものです。
新設合併と吸収合併
合併には、合併当事会社の全てが解散・消滅し、新会社を設立する新設合併と、1つの会社が存続して、他の会社を吸収する吸収合併があります。
新設合併の場合には、会社の設立時の各種手続き・事務負担が余計に必要になってくるため、実務上は、吸収合併の方法をとることがほとんどです。
なお、吸収合併の場合、合併により存続する会社を合併法人といい、解散・消滅する会社を被合併法人といいます。
合併の手続
合併は、株主・債権者・社員にとって重要な問題であるため、会社法において、一定の手続きが定められています。
また、合併を自由に認めると企業間の競争を阻害する要因ともなるため、独占禁止法上においても、一定の手続きが定められています。
ここでは、主な手続きについて簡単に説明し、その後税務上の取扱を見ていきます。
ア 合併契約書
合併に関する条件や合併比率、増加する資本金の額などを記載した合併契約書が締結されます。
合併契約書の記載事項は、法定化されているため、これを欠く場合は合併自体が無効となるため十分な注意が必要になります。
イ 株主総会の決議
合併契約書の内容について、事前に株主総会の承認の決議をします。
この決議は、発行済株式数の過半数にあたる株式を保有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の多数決によって行う特別決議によらなければなりません。
また、合併に異議のある株主については、株式買取請求権を認め、少数株主の保護を図っています。
旧商法のもとでは、消滅会社が債務超過の場合には合併は許されないという考え方もありましたが、新会社法のもとでは、それが許されることを前提として、そのような合併をする旨を取締役が株主総会で説明することが義務付けられました。
ウ 債権者保護手続
債権者保護を図る手続きとして、会社は債権者に対して、合併に異議あれば一定期間内に申し出る旨を官報で公告し、かつ知れたる債権者に対しては個別に催告することとされています。
エ 公正取引委員会への届出
上記ア~ウは会社法による定めですが、独占禁止法による定めとして、一定の規模以上の合併については、企業間の競争を阻害する要因となるため、事前に公正取引委員会に届出ることとしています。
公正取引委員会が届出を受理してから30日間は合併禁止期間とされています。
こうして、合併期日において資産・負債の引継が行われ、合併登記により合併の効力が発生することになります。
法律的な手続きは以上のようになりますが、社員に対する説明についても慎重な配慮が求められます。
特に、合併により人員を削減する場合や、給与水準の変動が伴う場合等には、経営者自らが社員に対して直接説明することが必要であり、また、実際にそのようにされている事例が多いです。
オ 簡易合併制度
通常、合併をするには合併法人及び被合併法人の株主総会の特別決議が必要となることは記述したとおりですが、大規模の会社が小規模な会社を吸収合併する場合など一定の要件を満たす場合は、合併法人において合併契約書の承認の株主総会決議が不要となり、取締役会の決議だけで合併することができます。
これを「簡易合併」といいます。
また、存続会社が消滅会社の「特別支配会社」(議決権の90%以上を実質的に支配している場合の支配している会社)である場合には、消滅会社においては株主総会の承認は不要となります。
会計処理上の留意点
新会社法の施行により、企業結合会計基準との整合性がとられました。
合併をはじめとする企業結合の会計処理方法には、パーチェス法と持分プーリング法の2つの方法があります。
パーチェス法は、被買収企業から受け入れる資産および負債の取得原価を、買収対価として交付する現金および株式等の時価とする方法であり、持分プーリング法は、資産、負債および資本を、適正な帳簿価額で引き継ぐ方法です。
企業結合の経済的実態を、「取得」と「持分の結合」とに区分し、企業結合に係る会計基準に照らして取得と判定された場合には、パーチェス法によって会計処理が行われ、持分の結合と判定された場合には、持分プーリング法により会計処理が行われます。
ある企業結合が、取得に該当するか持分の結合に該当するのかは、(1)対価、(2)議決権比率、(3)議決権以外の支配に基づき判断されます。
取得と持分の結合の違いは、その企業結合によって、それまでの持分が断たれているのか(取得)、それともそのまま継続しているのか(持分の結合)、の観点から区分され、それぞれに見合った会計処理を行うこととされています。
したがって、具体的な合併の会計処理は、次のとおりとなります。
(1) 合併が取得に該当する場合
合併が取得と判定された場合には、パーチェス法を適用します。
パーチェス法では、被合併法人から受け入れる資産および負債を時価評価しますが、この受入資産および負債の時価純資産額と対価として交付する現金および株式等の時価との差額がのれんとして認識されることになります。
のれんは20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、合理的な方法により規則的に償却することになります。
(2) 合併が持分の結合に該当する場合
合併が持分の結合として判定された場合には、持分プーリング法を適用します。
持分プーリング法では、すべての資産、負債および資本を、それぞれの適正な帳簿価額で引き継ぐことになります。
したがって、被合併会社の資本金、資本剰余金、利益剰余金についても、原則としてそのまま引き継ぐことになります。
税務上の留意点
ア 適格合併
会社が合併をした場合、原則として被合併法人の資産・負債は、合併法人に対して時価で譲渡されたものとして取り扱われるので、これによって生じた利益または損失について課税されることになります(非適格合併)。
しかし、一定の要件を満たす「適格合併」については、税務上は帳簿価額により資産・負債を引継ぐものとして課税が繰延べられます。
適格合併とは、次の税務上の要件を満たす合併をいいます。
a.合併により交付される財産が合併法人の株式だけであること。合併に際して金銭等が交付される場合は適格合併に該当しない。
b.上記aの要件を満たし、かつ合併法人および被合併法人の持分関係が100%である企業グループ内の合併である場合には適格合併に該当する。
c.上記aの要件を満たし、かつ合併法人および被合併法人の持分関係が50%超100%未満である企業グループ内の合併で事業継続等の要件を満たす場合には適格合併に該当する。
d.上記aの要件を満たし、かつ共同事業を営むための合併として事業継続等の要件、事業関連要件、事業規模要件、株式保有継続要件を満たす場合には適格合併に該当する。
なお、上記要件を満たさない非適格合併の場合には、原則として、時価により資産等が合併法人に譲渡されたものとされ、移転資産等の譲渡損益は被合併法人の益金または損金に算入されることになります。
イ 繰越欠損金の引継ぎ
被合併法人の税務上の繰越青色欠損金は、適格合併の場合のみ引き継ぐことができます。ただし、欠損法人の合併による課税逃れを防止するために一定の制限が設けられています。
また、合併法人の繰越青色欠損金についても同様の趣旨によって、適格合併で一定の場合には繰越青色欠損金の控除が制限されています。(非適格合併の場合には、合併法人での控除制限はありありません)
非適格合併の場合には、被合併法人の繰越青色欠損金は引き継ぐことができません。